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産業廃棄物収集運搬業許可の3大要件
産業廃棄物収集運搬業の許可は、行政庁に申請すれば「誰でも簡単に」取れるわけではありません。
産業廃棄物収集運搬業を営むためには、厳格に定めらた許可要件を全てクリアしている必要があります。
その許可要件が①人的要件、②物的要件、③財産的要件の3つの要件になります。
①人的要件
産業廃棄物収集運搬業は、運搬する廃棄物の種類やその取り扱い方をしっかり理解し、定められた各種法令等に関する知識を持っている者に許可されます。
講習会を受講し、有効な修了証があること
産廃許可を申請する会社の取締役や使用人、個人事業主であればその本人が、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する「産業廃棄物の許可申請に関する講習会」を受講・修了していなければなりません。
- 個人の場合 申請者本人
- 法人の場合 代表者、役員(監査役を除く。)又は令第6条の10に規定する使用人のうち常勤者
欠格要件に該当しないこと
産業廃棄物収集運搬業許可は、各種法令等に従って適正な業務を遂行できるであろう者に許可されます。
そのため、人的要件を設けており、その許可の欠格要件に該当する場合は、申請自体が受け付けられません。
申請する会社だけでなく、会社の役員等(取締役、執行役、相談役、顧問、法人に対して業務を執行する社員、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有する株主又は100分の5以上の出資をしている者を含む)や政令第6条の10に規定する使用人(政令使用人)の中に、1人でも欠格要件に該当する者がいる場合は、産業廃棄物収集運搬業許可は不許可となります。
欠格要件の内容 | |
1 | 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない 者 |
2 | 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
3 | 次に掲げる法律の規定若しくはこれらの法令に基づく処分に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
①廃棄物処理法 ②浄化槽法 ③大気汚染防止法 ④騒音規制法 ⑤海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 ⑥水質汚濁防止法 ⑦悪臭防止法 ⑧振動規制法 ⑨特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律 ⑩ダイオキシン類対策特別措置法 ⑪ポリ塩化ビニフェル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法 |
4 | 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (第32条の3第7項及び第32条の11第1項を除く。)の規定に違反し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
5 | 次に掲げる法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない
①刑法第204条(傷害罪) ②刑法第206条(現場助勢罪) ③刑法第208条(暴行罪) ④刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集罪) ⑤刑法第222条(脅迫罪) ⑥刑法第247条(背任罪)の罪 ⑦暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪 |
6 | 次に掲げる事業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合は、取消し処分に係る聴聞の通知があった日前60日以内に当該法人の役員であった者を含む)
①一般廃棄物収集運搬・処分業の許可 ②産業廃棄物収集運搬・処分業若しくは特別管理産業廃棄物収集運搬・処分業の許可 ③浄化槽清掃業の許可 |
7 | 次に掲げる事業の取消し処分に係る聴聞の通知があった日から取消し処分をする日又は処分しないことを決定する日までの間に当該事業の廃止の届出をした者で、その廃止の届出の日から5年を経過しない者(廃止の届出をした者が法人である場合は、取消し処分に係る聴聞の通知があった日前60日以内に当該法人の役員であった者を含む)
①一般廃棄物収集運搬・処分業の許可 ②産業廃棄物収集運搬・処分業若しくは特別管理産業廃棄物収集運搬・処分業の許可 ③浄化槽清掃業の許可 |
8 | その業務に対し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者 |
9 | 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 |
10 | 暴力団員等がその事業活動を支配している場合 |
②物的要件
産業廃棄物収集運搬業許可における物的要件とは、「運搬車両」や「運搬容器」などを言います。産業廃棄物収集運搬業を営むために産業廃棄物を運搬する車両や容器を確保している必要があります。
使用権限を有する運搬車両があること
産業廃棄物収集運搬業許可申請で登録する運搬車両について、申請者が使用する権限を有していなければなりません。
この運搬車両の使用権原は、自動車検査証の所有者又は使用者の欄で確認できます。
東京都の場合、使用権原があると認められるのは次の場合のみです。
- ①自動車検査証の使用者が申請者と一致している場合
- ②自動車検査証の使用者欄が空欄で、所有者と申請者が一致している場合
※東京都では、借受車両(レンタル車両)の登録は認められていません。
運搬容器を持っていること
産業廃棄物収集運搬業許可申請にあたっては、これから収集運搬を行う予定の産業廃棄物の種類や特質を考慮して、それらが飛散・流出等しないための運搬容器を用意しなければなりません。
よく使われている運搬容器の例
名称 | 概要 |
オープンドラム缶 | 上蓋を取り外せるタイプのドラム缶です。固形物や粉末状の産業廃棄物の飛散を防げるために使用 |
クローズドドラム缶 | 上蓋が固着されており、充填口から産業廃棄物を注入。廃油など液状の産業廃棄物を運搬する際に使用される。また、耐腐食加工が施されたものは、廃酸・廃アルカリ等にも使用可能。 |
ペール缶 | 容量は18~20リットル程度が一般的で、運搬量が少ない場合に使用。ドラム缶と用途はほぼ同じで、運搬車両の荷台形状や最大積載量のなどからペール缶を用いることもある。水銀使用製品の産業廃棄物収集運搬等に使用されることもある。 |
フレコンバッグ | フレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)は安価で幅広い種類の廃棄物(液体を除く)に使用されている。石綿含有産業廃棄物の収集運搬用も存在する。 |
耐水性プラスチック袋 | 耐水性プラスチック袋は、主に汚泥の石綿含有産業廃棄物の収集運搬に使用。 |
プラスチックコンテナ | 固体の産業廃棄物のうち、飛散の恐れがある廃棄物はプラスチックコンテナ等を用いて収集運搬。 |
荷台シート | 廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず、がれき類など、運搬車両の荷台に直積みする場合には飛散防止のためシート掛けを施す。 |
③財産的要件
産業廃棄物収集運搬業許可要件である財産的要件は、東京都に限らず各都道府県も厳格に審査される項目です。
基本的に産業廃棄物を扱っている会社が利益が計上できず、さらに債務超過状態にある場合には、産業廃棄物収集運搬業許可の要件を満たさないとされます。債務超過しているからといって即倒産するわけではありませんが、経営に行き詰まったために経費削減を目的として不法投棄をしてしまったりしては、周辺環境へ及ぼす影響も大きいものとなりえます。
そのため、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するには、財産的要件として以下の要件が審査されます。
(1)直近の法人税納税額が1円以上、かつ3年間に未納税額があるか否か
(2)直近の決算期において債務超過であるか否か
(3)債務超過の場合、返済不要な負債があるか否か
(4)返済不要な負債の総額が債務超過額以上であるか否か
さらに、「返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類」や「中小企業診断士、公認会計士又は税理士によって作成された経理的基礎を有することの説明書」といった書類の提出を求められることがあります。